この内容は、『めざせジムリーダー』の第5章~2~です。

 

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ポケモンGO体験談『めざせジムリーダー』もくじ

 

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目次

【第5章】ポケモンやってる人に悪い奴はいない~2~

30・ジムリーダー

聡はイーグルアイに仕事のノウハウを学ぶため、桂木町の喫茶店に通うようになった。

 

今までは、インターネットの情報を読み漁って実践していたので、プロから直接指導してもらうのは初めてだった。そこで初めて、自分の浅はかさに気づかされた。

 

ただ闇雲にコンテンツを増やしていくのではなく、コンテンツを丁寧に作りこんでいくことが重要だと言われた。あまり気にしていなかったタグにも意味があると教えてもらった。

 

イーグルアイは、最後にこう口にした。

 

「ネットビジネスであれ、コンビニ経営であれ、もっとも力を入れなくてはいけないのは集客なの。どんなに良いコンテンツを用意しても、見に来てくれる人がいなければ商品は売れないから」

 

聡にとって本当に為になったのは、ネットジビネスの実践方法よりも、こういったビジネスの考え方だった。優れた道具を持っていても、使い方を知らなければ意味がない。そう考えると、仕事もポケモンも似ている気がしてきた。

 

みっちり仕事と向き合っているため、ポケモンGOをプレイする時間は少なくなった。時折、四天王ジムの現状がどうなっているのかが心配になり、ソワソワした。こうなると、病的な依存とさえ思えてくる。

 

以前の聡なら、その誘惑に負けていただろう。でも、今は結果を出す強い動機があり、それが仕事へと突き動かした。

 

そのため、ポケモンGOをプレイするのは夜の二十二時からとなった。よくよく考えると、イーグルアイもこれくらいの時間になるまで動いていない。今では、その凄さが理解できる。本当に凄い人というのは、仕事と遊びを両立できる人だ。

 

聡が常磐町に到着すると、カンナジムとシバジムが赤に、キクコジムとワタルジムが黄色になっていた。聡は、カントー地方の四天王を攻略する順番でジムを取り戻していく。

 

新ジムは、たいだい五分で壊すことができるため、合計二十分で四天王ジムを制圧することができる。以前の10レベルジムと比べれば簡単だ。本当にツラいのは、寒さとの戦いのほうだ。

 

ジムリーダーとは……?

 

ジムを壊す時、そんなことを考えるようになった。

 

旧ジムの時は、てっぺんに君臨するポケモンを配置した者がジムリーダーだと思っていた。ポケモンシリーズすべてのジムリーダーも、ジムの奥で挑戦者を待ち構えている。

 

だが、その概念は新ジムで廃止された。ジムのポケモンたちは塔としてそびえ立つのではなく、横並びとなる。一番目に入れようと六番目に入れようと、その立ち位置は変わらない。

 

ネットでは、ジムの近くに住んでいる人を『管理人』と呼んだりする。ジム内のポケモンのCPが減れば木の実で回復させたり、壊れたら真っ先に取り戻したりするからだ。

 

「そうじゃないんだよなあ」

 

夢のない話をポケモンの世界に持ち込みたくない聡は、ジムリーダーのこだわりを見せつけるかのように四天王ジムを制圧していった。青い光が灯台のように夜を照らしていく。

 

すべてが終わり、ようやく自宅に着く頃、何気なくワタルジムを確認した。今日は『青龍』のメンバーが金ジムのために動いていたのか、すでに立派な青い旗が掲げられていた。

 

誰が入っているのかを確認しようとジムの中を覗いたとき、求めている答えがそこにはあった。

 

聡が入れたのはラッキーだったため、他のポケモンと比べると身長が低くなりがちだ。そのため、後から入ってきたポケモンたちは、ラッキーの後ろに隠れるように配置されていた。まるで、ラッキーが率先して彼らを守っているようにさえ見えた。

 

「今度は、オレが守らないとな……」

 

いつも父の背中に守られてきたことを思い出した聡は、ジムリーダーの誇りを胸に歩き出した。

 

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31・キミにきめた

「どうだ、仕事のほうは?」

「それ、昨日と同じ質問。そんな急に変化しないよ」

「その女性の方に、お礼を言わないとな」

「ああ、そうだね……」

 

明日が手術の日というのに、病室で横になっている父はそんな話ばかりをしていた。でも、聡は一つ一つ丁寧に答えた。その様子を、母は微笑みながら見守っていた。

 

「で、なんで赤チームにしたの?」

「それは、お前が赤にすると思ったからだ」

「はあ?なんの根拠だよ」

「最初に買ってやったゲーム、赤だったろ」

「……覚えてたんだ」

 

話していると、自分の知らなかった父に気づくことができた。頑固で融通が利かない性格だと思っていたが、ちゃんと向き合ってこなかったのは聡のほうだった。距離が近かっただけに、そのことに気づかずここまできてしまった。

 

その後、父は初めてのレイドバトルについて話してくれた。駅前で集まっていたグループに混ぜてもらったようだ。

 

「みんな、見ず知らずの父さんに色々と教えてくれてな。本当に優しい人ばかりだった」

「うん、そうだよ。ポケモンやってる人に悪い奴はいない……から」

「ふふっ、そうだな。また、レイドをやってみたいな」

「病気が治ったら、オレの仲間と一緒にやろう」

 

父は笑顔で頷いた。希望を捨てていない気がして、聡には嬉しかった。

 

聡は、明日からホウオウが出ることを教えた。今年の劇場版ポケットモンスター『キミにきめた』も大ヒットしており、ポケモンGOでも注目が集まっていることを夢中で語った。

 

検査の時間で看護婦が入ってきたため、会話は途切れてしまったが、「ホウオウか……見たいものだな」と父は口にしていた。

 

聡と母は病室から出ると、階段を下りる通路に向かって歩き出した。その時にすれ違った女の子が羽根飾りのついた帽子を被っていたのを見て、聡はハッとした。

 

「虹の勇者だ……」

「えっ?」

 

驚く母に、聡は興奮気味に話した。

 

「ホウオウは、スイクン、ライコウ、エンテイに命を与えたという言い伝えがあるんだ。だから、お守り代わりに父さんのスマホでゲットしたいっ」

「そうね、お父さんも喜ぶと思う」

「父さんの手術って、何時だっけ?」

「十二時からよ」

 

新しい伝説のポケモンは、いつも早朝からやってくる。八時から始めたとしても四時間はある。病院までの移動を考えて、三時間三十分といったところだ。

 

レイド仲間がいる聡にとって、この時間は長すぎると感じた。もしかすると、五匹は捕まえられるかもしれない……そんな風に思っていた。

 

だが、聡は忘れていた。ホウオウに選ばれた者しか、虹の勇者にはなれないことを……。

 

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