この内容は、『めざせジムリーダー』の第2章~1~です。

 

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ポケモンGO体験談『めざせジムリーダー』もくじ

 

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【第2章】感情が見えるスマホアプリ~1~

10・サンムーン

十一月になると、もう夜中の徘徊は無理だ。

 

双葉市は十二月中旬から雪が降り積もるため、この頃からでも冷える。夜なら、フロストケイブ並みの寒さだ。

 

しかし、今日はそんなことで寝坊するわけにはいけない。十一月十八日は、サンムーンの発売日だ。

 

自宅のチャイムが鳴る。玄関で待っていた聡は、宅配業者の声が聞こえる前にドアを開けてしまい、相手を驚かせてしまった。

 

ハンコを押してポケモンセンターからの小包を受けると、すぐに二階の部屋に戻った。

 

中身を取り出すと、待ちに待ったポケットモンスターサンを手にした。

 

冷え冷えのパッケージ版を急いで開け、カセットを3DSに差し込む。最初に選ぶパートナーポケモンは、すでに決まっていた。

 

「聡ちゃん、芝浦公園やられてるっ」

 

下から母親の声が聞こえたが、返事をせずにプレイを続けた。

 

しばらくすると、ガチャッと勝手にドアが開いた。

 

「またシルバーよ!私、もう少しでポケコイン貰えるのに!」

 

シルバーとは、黄色チームの35レベルで男性アバターの奴だ。アップデートにより、ジムの仕組みが修正されて壊しやすくなった頃から、よく四天王ジムを壊しにきていた。

 

「あそう」

「行かないの?」

「うん、今日はちょっと無理」

「えー、そうなの……」

 

母親は肩を落として出ていった。

 

あのモチベーションには驚かされる。ポケモンGOは若い世代の大半が去ったが、中高年のユーザーは今なおプレイし続けているとネットで書かれていたが、その事実を常磐町内でも実感できた。それは何も、母だけのことを言っているわけではない。

 

先週の日曜日。シバジムにいくと、小学生たちは違うことに夢中だった。かつて聡と戦った短パン小僧も、今はポケモントレーナーではなくなっていた。

 

立ち去ろうとすると、黒光りしたプリウスが公園に横付けした。運転手の顔を見るなり、ギョッとする。それは、フジ老人のような年老いた男性だった。

 

現在の常磐町は、こういう現状だった。双葉市全域……いや、世界規模で見ても、おそらく同じことが起こっているのだろう。

 

そして、その現状は聡のモチベーションにも影響を与えていた。順調に上がっていたレベルは、ついに32でストップしてしまった。

 

30レベル以降は上がりづらいことも原因ではあるが、聡からジムリーダーの座を奪ったヴィーナスが38レベルの大台に到達したことも、やる気を削ぐ原因だった。

 

ヴィーナスが四天王ジムを取り戻してくれるから、そのあとに入れたほうが時間の節約になる……そんなことを考えるようにさえなっていた。

 

「よーし、ニャビー!キミにきめた!」

 

サンの主人公がニャビーを抱きかかえると、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

 

一区切りがついたあと、聡はスマホを手に取った。モチベーションが下がっても、何故かポケモンGOを立ち上げて状況を確認することはやめられなかった。

 

「おうおう、壊れてんなー」

 

かつて無敗を誇っていた青の聖地は、どんどん黄色に染まっていく。ジムが壊しやすくなったからこそ、今まで絶対数のせいで虐げられてきた黄色も活発に動けるのだろう。

 

そしてついに、ワタルジムが更地になった。

 

カンナジムにシャワーズ、シバジムにサイドン、キクコジムにギャラドスが置かれたので、順番的にカイリューが置かれる気がした。

 

「……ん?」

 

てっぺんにいるポケモンが小さすぎて確認できなかった。

 

聡はワタルジムをタップし、ジムの中へと入った。

 

ピチピチとコイキングが跳ねている。しかも、CP10の最弱だった。

 

聡は、そのコイキングをじっと見つめた。一度ジムの外に出て、他のジムのポケモンたちを確認する。

 

他のジムに入っているポケモンは、すべて35レベルで強化できる最大値となっていた。

 

もう一度、ワタルジムを確認する。変わらず、コイキングがピチピチと跳ねている。

 

聡は腕を組んで、この状況を整理した。

 

ワタルジムは車が停まりやすいこともあるのか、もっとも攻撃されるジムだった。モチベーションが高かった時期の聡は、ワタルの名をつけたそのジムに愛着を持ち、どんなに忙しくてもそこだけは壊してきた。

 

当然、倒してきた相手にシルバーも含まれる。

 

そして今、シルバーはそのジムにコイキングを配置したのだ。何度も考えたが、やはり答えは一つしかなかった。

 

これは、ドラゴンアッシュに対する挑発行為である。

 

サンのレポートを書くと、3DSを閉じた。ゆっくりと立ち上がり、部屋のドアを開ける。

 

「母さん、準備して。ジム全部取り戻す」

 

聡のモチベーションが戻った瞬間だった。

 

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11・更地マン、現る

アッシュ@キミにきめた

『今年のクリスマスは忙しくなるわー

 

※※※@※※

『お前、何言ってるの?』

※※※@※※

『いやいや、さすがにクリスマスデートの話でしょw』

※※※@※※

『オレは1匹捕まえればいいかな』

※※※@※※

>>1

『ぼっちwwwザマァァァwwwwwwwwww』

 

 

クリスマス期間中に出現するピカチュウは、赤い帽子を被って登場してくれる。

 

まだ、『ピカチュウだいすきクラブ』のメダルを金にできていない聡にとっては、好都合のイベントだった。

 

「ピカチュウは捕まえづらいから、イベントに備えてズリでも集めておくか」

 

聡がポケモンGOを立ち上げると、目の前に現れたワタルジムがバチバチと火花を散らしている。

 

しばらく様子を見ていたが、更地になっても色が変わることはなかった。

 

「またか……」

 

すでにネットでは有名となっていたが、実際に自分が被害に遭うとは思いもしなかった。

 

自分のアカウントを晒すことを嫌い、壊すだけでその場を去っていくトレーナー……通称『更地マン』。

 

戦術面から見れば、壊された後に戻ってくるポケモンに『げんきのかけら』を使う必要がないので節約になる……といった理由もあるようだが、結局は嫌がらせ目的なのだ。

 

ここ一週間、この更地マンが四天王ジムに蔓延っていた。

 

夜だけならまだしも、昼夜問わずに攻撃してくる暇人だった。

 

だが、聡にとってはなんの問題もなかった。こっちからすれば、相手を倒さずに入れることができるのだ。

 

聡は自転車に跨り、更地となったワタルジムにポケモンを配置した。すると、今度はシバジムのポケモンが戻ってきた。ジムが見えるところまで移動すると、やはり更地だった。

 

「こいつ、更地にするために、わざわざ車で移動してるのか。頭おかしいだろ」

 

その後、雪道の町内を自転車で半周してシバジムに到達。戻ってきたポケモンをそのまま入れてやった。

 

すると、再びポケモンが戻ってきた。それは、先ほど入れたワタルジムのポケモンだった。

 

「……ほう、いいだろう。目を合わせないポケモントレーナーは、すでに負けていることを証明してやるよ!」

 

ワタルジムを目指して、自転車のペダルを全力で漕いだ。そこに更地マンがいないのは分かっているが、相手の目的は手に取るように分かっていた。

 

ワタルジムに素早くポケモンを配置すると、今度は全速力でシバジムへと戻った。案の定、セダンタイプの車が停まっている。

 

すぐに走り去っていったが、その存在を確認しただけで収穫は十分だった。

 

シバジムを確認すると、中のポケモンは健在だ。つまり、ここから予想できることは一つだ。

 

更地マンは、聡の姿が見えたからバトルをせずに走り去ったのだ。

 

「あいつ、青だから更地にしてるんじゃなくて、オレを狙って更地にしてるのか……」

 

北風の寒さとは別に、聡はただならぬ予感を感じずにはいられなかった……。

 

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