2016年7月16日(土)に上映された『ボルケニオンと機巧のマギアナ』の内容と感想の記事になります。
前回の映画予告で、ジガルデ・パーフェクトフォルムがシルエットで登場しており、話題となっていた作品です。
なお、内容は結末まで記載しているのでご注意ください。
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目次
登場人物
キミア(松岡茉優)
アゾット王国の王女。てもちポケモンは色違いのサーナイト。
ラケル(中川翔子)
キミアの弟。王国の発展のため、神秘科学で造られたマギアナを探している。
てもちポケモンはペロリーム。
ジャービス(山寺宏一)
マギアナの力を手に入れ、王国を乗っ取るためにラケルを取り入れる。
エリファス
神秘科学の第一人者と呼ばれる人物であり、500年前にマギアナを造った人物でもある。
ボルケニオン(市川染五郎)
ネーベル高原で生息する多くのポケモンたちを守ってきたポケモン。
ポケモンハンターが見境なくポケモンを捕獲するので、人間を信用していない。
マギアナ
人間に造られたポケモン。その内にソウルハートと呼ばれる大きな力を秘めている。
『ボルケニオンと機巧のマギアナ』の内容
1
雲の切れ間から影が伸びた。
蒸気の唸り声を立てて現れたのは、機巧都市と呼ばれるアゾット王国の飛行船だ。
それを運転しているジャービスの腹心ドーガとイーサは、檻に閉じ込めたマギアナを王国へ持ち帰ろうとしていた。
すると、レーダーが何かを捉えた。ここは、鳥ポケモンも飛べない上空なのにだ。
しかし、ドーガにはそれが何かが分かっていた。
相棒のイーサに運転を変わり、短く刈り込んだ髪の毛を掻きながらデッキへと出る。
案の定、来客者はすでに降り立っていた。高圧の蒸気が噴き出るアームが、頭の上でガッチリと連結される。
赤いボディが光で照りかえる巨漢の体を見るなり、ドーガは口元に笑みを浮かべた。
「はい、そうですかと渡すかよっ」
侵入者の前にモンスターボールが転がる。中からは、フーディンとオニゴーリが飛び出す。
望まれぬ侵入者、ボルケニオンは威嚇の唸り声を上がる。
「メガウェーブ」
ドーガが腕のリングに手をかざす。すると、2匹のポケモンたちは苦しむような鳴き声を上げる。
しかし、すぐにそれは治まった。代わりに、強大な力であるメガシンカの恩恵を受けていた。
ボルケニオンは、果敢に体当たりをかます。しかし、メガオニゴーリとメガフーディンの力に翻弄され、思うようにバトルを進めることができずにいた。
ドーガはここを好機とみて、ジャービスが開発した拘束リングを投げつける。
ボルケニオンは1つを弾いたが、もう1つは前足にガッチリと繋がってしまう。
「フリーズドライ!」
動きが鈍ったボルケニオンに、それを避けるすべはなかった。
オニゴーリの技が見事に決まり、ボルケニオンは空へと投げ出された。
2
「シトロン、手加減はなしだぜ」
旅を続けていたサトシは休憩がてら、シトロンにポケモンバトルを申し込んだ。
ジムリーダーであるシトロンに、サトシの危惧は不要だった。
初手にホルビーを出し、『あなをほる』の回転を活かした攻撃でオンバーンを攻める。
しかし、やはりオンバーンのほうが翼力が強く、吹き飛ばした。
ここぞとばかりに、近くで見ていたハリマロンは胸を張って前に出るが、シトロンが指示したのはレントラーだった。ハリマロンは肩を落とす。
2匹の攻防に触発され、ピカチュウも参戦。『エレキボール』を放つが、レントラーは電撃を一飲みしてしまう荒業を披露する。
しかし、ここで引き下がるピカチュウではなく、ご自慢の『アイアンテール』で反撃に出ようとした。
その時、ゴゴゴゴゴッと何かが轟いた。空を見上げると、隕石のような塊が落ちてくる。
それが落ちた衝撃で、辺りに強烈な砂埃が舞う。
「大丈夫か、ピカチュウ」
自分も衝撃を受けたにも関わらず、サトシはピカチュウのほうが心配だった。
すると、突如、その動きが止まった。正確には、進めなかったのだ。
サトシは、その時初めて、自分のお腹に謎のリングが装着されていることに気がついた。
見えない力に引っ張られるように、サトシは落下物に当たった。見上げると、そこには大きな赤いポケモンがそびえ立っていた。
「ボルケニオンっ?」
心配で駆け寄ってきたシトロンがそう言うより先に、ボルケニオンはサトシに『ハイドロポンプ』をぶち込んだ。吹っ飛ばされるが、謎のリングのせいでボルケニオンの前足についている同系のリングに、サトシは再び引き寄せられる羽目となった。
「しつこい人間だ」
ボルケニオンは人間にも伝わる声でそう言った。テレパシーの力だ。
「電磁パルスのせいです。2人は、見えない力で繋がってしまっているんです」
「へっ、上等だぜ」
シトロンの説明に、ボルケニオンは舌打ちすると、早々に歩き出す。すると、見えない力でサトシは引きずられた。
「おいっ、ま、待って!どこ行くんだよ!」
ついには、走り出し、サトシも一緒になって走るしかなかった。
3
飛行船が王宮の司令塔に到着し、王子であるラケルは今か今かと落ち着かない様子だ。
その傍らには、ジャービスの姿もあった。手には、キーストーンのようなものが埋め込まれた杖を握っている。
扉が開くなり、マギアナが恐る恐る地上に降り立つ。
「おお、あなたがマギアナですか。今までの数々の非礼、お許しください」
ラケルは自分がアゾットの王族であることを告げると、マギアナは服についているエンブレムを確認した。
それは、かつて500年前に出会った紋章と同じだった。
『そちの魂が人々の助けとなり、願いとなる』
自らを造り出したエリファスの言葉が、マギアナの心を過っていた。
その時、空中から聞き覚えのある蒸気音が鳴り響いた。マギアナが空を見上げると、そこにはボルケニオンの姿があった。
ボルケニオンが降り立つと、サトシは安堵の表情を浮かべながら地面に足を下ろした。
「あなたですか、マギアナを守っていたというのは」
ラケルは敵意ではなく、まるで物珍しいものを見るような声色で尋ねる。しかし、ボルケニオンにとってはどちらも同じだった。
飛行船に乗っていたドーガとイーサが降り立ち、各々のポケモンを繰り出す。
「ふふっ、メガウェーブ」
ジャービスは手持ちのゲンガーやポケモンたちに杖の力を使うと、たちまちメガシンカしていく。
ボルケニオンはマギアナを取り返そうと攻め入るが、数のせいで身動きを封じられ、早々に『れいとうビーム』を撃たれて氷づけにされてしまう。
バトルの衝撃で放りだされたサトシは、近くにあったパイプにしがみつく。
その姿を見て、ラケル王子はようやくサトシの存在に気づいた。
怪訝そうなサトシに、ラケルは自分たちの行動の正当さを主張し始める。
マギアナは、もとはアゾット王国に献上された存在だということ。
500年前の戦乱のせいで、マギアナがいなくなってしまったこと。
そして、マギアナのソウルハートがあれば、王国を繁栄されることができるということ・・・。
すると、ボルケニオンはここぞとばかりに氷を破壊し、スチームを噴き出した。
その衝撃でサトシが落ちると、偶然にもマギアナを掴んでいた。
電磁パルスの力で、自動的にボルケニオンの手元に引き寄せられ、そのまま退散した。
ちょうどサトシを追ってやってきたセレナたちの援護もあり、ボルケニオンは橋の下へと身をひそめることができた。
マギアナはお礼のように、花束を手から取り出して、サトシを驚かせた。
近づくサトシに、ボルケニオンはアームの発射口を向けた。
「人間は信用ならねぇ。そして、その人間と一緒にいるポケモンたちもだ」
サトシの手持ちであるピカチュウたちは否定するが、ボルケニオンは一向に聞く耳を持たない様子だった。
しかし、マギアナが首を振ってボルケニオンの前に立つ。
そして、自分たちの住処であるネーベル高原に連れていくと説得を始める。
ボルケニオンは否定をするが、怒ったマギアナはボルケニオンのボディを子供のように叩き出す。
しまいには、プリプリしながら歩き出す。しかし、少々ドジッ子のマギアナは、途中でこけてしまう。
ため息を深くついたボルケニオンは、アームを使ってマギアナを自分の背中に乗せた。
「おい、何ボサッとしてる!さっさと掴まれ」
ボルケニオンは背を縮めると、サトシを促した。
サトシは嬉しそうに、その背に手をかけた。
4
野生のポケモンたちの鳴き声がさえずる深い森の中を、サトシたちは歩いていた。
ボルケニオンやマギアナの住処であるネーベル高原までは、まだ先のようだ。
ボルケニオンがサトシを乱暴に扱うので、シトロンは宇宙服のような白い服を開発していた。
シトロンの発明『てっぺきくん』を着ていれば、どんな攻撃も耐えると言われ、サトシはなんの疑いもなく袖を通した。
その様子を見るなり、ボルケニオンはつまらなそうに舌打ちをした。
日も暮れ、途中で野宿することになった。
突如、『タネマシンガン』がサトシたちの安眠を妨げた。崖を見上げると、ロケット団の姿があった。
しかし、隣にはカイロスとヘラクロスという、いつもとは違う顔ぶれだった。
「はーっはっはっは!メガウェーブロケット団!」
なんと、彼らの腕にもメガウェーブ装置がつけられており、2匹はメガシンカした。
神秘科学を応用したジャービスの『ネオ神秘科学』がなせる技術で、ポケモンたちを強制的にメガシンカさせることができる装置だった。
絆により生まれるメガシンカにこそ意味があり、「ポケモンたちの気持ちは関係ないの!?」とセレナは怒りを露わにする。
マギアナの安全が優先だと、サトシとピカチュウ、ボルケニオンが囮となり、マギアナたちを逃がした。
ここで、シトロンの『てっぺきくん』が役に立つ。
メガカイロスやメガヘラクロスの攻撃を防ぎ、ピカチュウに指示を出せるからだ。
しかし、相手は偽りと言えど、メガシンカポケモン。ボルケニオンの『ハイドロポンプ』では起き上がってくる。
「ボルケニオン、あれをやるんだ」
サトシは一度、間近で見た『スチームバースト』を要求する。
「どうなっても知らんぞ」
サトシが防護服を顔まで覆ったことを確認すると、ボルケニオンはアームの中の水を一気に熱した。
水蒸気爆発のような衝撃が辺りを襲い、敵は遠くへと吹き飛ばされた。
サトシは静かになったことを確認して顔を出すと、周りは隕石が落下したかのようなクレーターができていた。
「こ、これがお前の本当の力なのか?」
「いや。山1個イっちまったことがある」
その時、マギアナたちがやってきた。その後ろには、アゾット王国のキミア王女が運転する小型飛行機の姿もあった。
どうやら、ロケット団が先回りしていたが、キミアの采配により、『いやな感じ~』の結末を与えたようだ。
「ったく、また1人増えてやがる・・・」
ボルケニオンは厄日だとばかりに、深いため息をついた。
5
ネーベル高原は、絵画に描くことも難しいほどに美しい自然だった。
命を育む海のように広い湖や、鳥ポケモンたちが安心して羽を休めるような大樹がそびえ立っている。
まさに野生のポケモンたちの楽園ともいえる場所だったが、サトシたちにはそれを見る余裕はなかった。
ここに来る途中、密猟者であるポケモンハンターに傷つけられたアマルスの手当てをしなければならないからだ。
ボルケニオンは人間に治療されることが我慢ならなかったが、セレナたちの献身的な治療により傷が癒えていくのを見て、それ以上はなにも言わなかった。
周りのポケモンたちも仲間のことが心配で近づいてくるが、サトシたちが顔を向けると怖がって逃げ出した。
彼らもまた、身勝手な人間たちに苦しめられたポケモンたちだった。
だからこそ、ボルケニオンはここの守護者として、ポケモンたちの安全を守っていた。
「お前もそうなのか、ボルケニオン?」
「オレの話はいいだろ」
ボルケニオンの横顔を見て、サトシはその心の傷に触れたような気がした。
「人間と一緒にいても、ポケモンはポケモンだと思う」
セレナの意見に、サトシも同感だった。
ポケモンのことが大好きなサトシは、仲間たちとともに手持ちポケモンを高原に放った。仲良くなるには、遊ぶのが一番だった。
よそ者のポケモンにさえ怯えていた高原のポケモンたちだったが、マギアナや治療をしてもらったアマルスと楽しく遊ぶピカチュウたちを見て、その疑念も徐々に晴れていった。
情けは人の為ならず、とはよく言ったもので、高原のポケモンたちと仲良くなることにはメリットがあった。
サトシとボルケニオンのリングを切除する方法を考えていたシトロンの前で、ゴクリンが『どくえき』を使った。
すると、いままでビクともしなかったリングが腐食し、切断できるようになったのだ。
これにより、サトシはボルケニオンの傍にいる必要はなくなった。
「さっさと出ていけ。もうここにいる必要はないだろ?」
しかし、サトシはボルケニオンと分かり合うことをやめていなかった。綺麗ごとばかり並べるサトシに、ボルケニオンはイライラし始める。
「ポケモンはウソをつかないが、人間はウソをつく!」
そんなボルケニオンを、ピカチュウは否定した。サトシは、好きなもののためなら頑張れる人間だと。
しかし、討論は中断された。黒い霧が高原を覆っていたのだ。
メガゲンガーの『くろいきり』が原因であり、メガシンカポケモンたちがぞろぞろと高原を囲む。
サトシとボルケニオンが止めようとするが、メガライボルトの『エレキフィールド』、メガハガネールの『ステルスロック』のせいで身動きが取れなくなる。
高原のポケモンたちも人質に取られ、マギアナは無抵抗のままジャービスのもとへと歩き出した。
「この国のためなのです、姉上」
キミアの説得も空しく、ラケルはジャービスにマギアナの力を見せるように指示する。
すると、ジャービスはマギアナの胸に取り付けられているソウルハートに手をつけた。
「なにをしているのですっ!そんなことをしては、マギアナが」
話と違う行動に、ラケルは止めようとするが時すでに遅く、マギアナはソウルハートを抜き取られてしまう。
「これさえあれば、あとは用済みです」
ジャービスはマギアナを高原に落とし、ラケルをメガゲンガーの『さいみんじゅつ』で眠らせたあと、メガシンカポケモン軍団の『はかいこうせん』でサトシたちを攻撃した。
「キミア王女、あなたは私の計画の邪魔です。ふふっ」
目的のものを手に入れた飛行船は、何事もなかったように飛び去っていった。
飛行船の中で一部始終を見ていたニャースは、ソウルハートの声が耳に響いた。マギアナは、まだ生きている。
悪役ではあるが、非道ではないロケット団はソウルハートを取り戻そうとするが、簡単に外へと放り出されてしまう。
しかし、ニャースだけは捕らえられた。マギアナの心を確認する必要があったからだ。
6
高原のポケモンたちが守ってくれたおかげで、なんとか一斉射撃の『はかいこうせん』から逃れたサトシやボルケニオンは、マギアナの前で立ち尽くしていた。
口聞かぬマギアナを、ボルケニオンは背中に乗せた。
「いま、取り戻してやるからな」
その気持ちは、サトシたちも同じだった。
キミアの小型飛行機で、ジャービスの後を追う。
その途中、通信が入る。キミアの家臣であるフラメルの情報で、エリファスの隠し設計をラケルの部屋で発見したと聞く。
それは、ソウルハートを使うことで封印が解かれる空中要塞であり、アゾット王国を守るために造られた兵器だった。
しかし、それがもとで500年前の戦争が起こり、エリファスはそれを封印した。そして、それを動かせるマギアナを王国から逃がしたのだった。
ジャービスは、すでにソウルハートを使って、空中要塞を浮上させていた。その先端についている発射口で、キミアたちが乗っている小型飛行機を狙い撃つ気だった。
しかし、その発射は途中で止まってしまう。
「マギアナが苦しんでいるにゃ!撃ちたくないって抵抗してるのにゃ!」
涙ながらに訴えるニャースに、ジャービスは邪悪な笑みを浮かべた。
「そうですか、マギアナの心はまだ生きている・・・。ゲンガー、『くろいまなざし』です」
ソウルハートが曇り、マギアナの心が擦れていくさまを、ニャースはただ見ているだけしかできなかった。
空中要塞にたどり着いたサトシたちを待っていたのは、メガシンカポケモン軍団だった。
ドーガとイーサの命令で、ピカチュウたちの動きを封じていく。
「絆のないメガシンカなんかに、負けない!」
セレナの言葉を証明するかのように、テールナーの『かえんほうしゃ』が活路を作った。
サトシ、ピカチュウ、ボルケニオン、キミアとサーナイトは、その隙に要塞の中枢へと乗り込む。
しかし、すでにトラップを仕掛けられており、身動きを取れなくなる。
「そこで見ていなさい、マギアナの力を」
ジャービスはシステムを起動させ、ついにレーザーが放たれてしまう。目標は、ネーベル高原だった。
もうダメかと思われたその時、10%フォルムとして戦っていたプニちゃんが浮遊要塞からダイブする。
ネーベル高原に隠していたセルたちを全て結集させ、ジガルデ・パーフェクトフォルムとして地上に降り立つ。
ネーベル高原に住むポケモンたちの力と合わせて、空中要塞のレーザーを『コアパニッシャー』で相殺した。
「バカな!どうして!あそこには、ちっぽけなポケモンしかいないはず!」
プニちゃんの存在に気づいていないジャービスは、動揺を隠しきれないでいた。
「オレたちは、ちっぽけな存在なんかじゃない!」
ボルケニオンは、自らの力で機巧の罠を破壊した。サトシは隙をついて、ジャービスの杖をへし折った。
メガウェーブできなくなったゲンガーは、逃げるようにその姿を隠してしまった。
ジャービスは空中要塞の制御を破壊した後に脱出しようとするが、サトシゲッコウガの『みずしゅりけん』により、故障した脱出装置で降りるハメとなる。その悲鳴は、すぐに聞こえなくなった。
マギアナにソウルハートを埋め込むが、マギアナの心は壊れたままだった。
目が覚めたラケルは、要塞が制御不能であることをサトシたちに教え、脱出と要塞の破壊の手伝いを申し出る。
破壊する理由。それは、落下地点がネーベル高原だったからだ。
ボルケニオンが水を補給して『スチームバースト』で要塞を破壊する案が固まり、キミアはセレナたちに知らせるため地上に急いだ。
ボルケニオンが水を供給している間、ラケルはサトシに自らの過ちを告白した。部屋に閉じこもって研究ばかりしていたから、ジャービスの言いようにされてしまったと。
「ラケル王子も、旅に出ればいいと思うよ」
ポケモントレーナーらしい、サトシの助言だった。
水を補充できたボルケニオンは、サトシたちと一緒に外を目指す。
ふと、ボルケニオンは足を止めた。ここは、要塞のコアとなる部分だった。
「なあ、ここでぶっとばしたほうが確実なんじゃないか?」
「だけど、ここだと脱出できなくなる。みんなで帰るって決めただろ」
「・・・ああ、そうだな」
サトシの意見に、初めて素直に頷くボルケニオン。
ようやく外に出られ、キミアの小型飛行機に乗り込むサトシ、ピカチュウ、ラケル。あとは、ボルケニオンだけだ。
「さあ、あなたも早く」
「ああ、そうだな!」
キミアの手を遮るように、ボルケニオンはアームのスチームで小型飛行機を強制的に浮かせた。
そして、再び要塞の中に戻っていく。
「マギアナ、守ってやれなくてすまなかった」
ボルケニオンは、固く目を瞑った後、渾身の『スチームバースト』で大爆発させ、空中要塞を粉々に砕いた。
「ウソつくなよ。みんなで帰るって言ったじゃないか・・・」
ウソをつかないと言ったポケモンのウソに、サトシは力なく呟いた。
7
ネーベル高原に戻ったサトシたちは、マギアナを囲む。高原のポケモンたちが寄り添うが、その目は虚ろのままだった。
ユリーカはシトロンにしがみつく。しかし、どうしてやることもできなかった。
その時だ。辺りに濃い霧が立ち込め始めた。誰もが、その霧を知っていた。
すると、マギアナは腰を上げた。500年間、その機巧の体に染みついている懐かしい湿気を感じ、マギアナは導かれるように歩き出した。
そこには、いつもの友の姿があった。
マギアナの心は、いつの間にかソウルハートに宿っていた。
マギアナはボルケニオンに寄り添い、いつまでも離れることはなかった。
fin
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『ボルケニオンと機巧のマギアナ』の感想
ポケモン映画の中でも、かなり感動的な演出に力を入れている作品だと感じました。
そのためには、観客がマギアナとボルケニオンを好きになる必要があり、その仕草や態度などが実に人間らしく描かれています。
造られた存在のマギアナであっても女性らしく、人間ではないボルケニオンでも男性らしく見えるよう、あらゆるシーンや場面展開にその性格が現れるように細工がされていました。
2匹が友であったのか、それ以上だったのか、見る者によって変化する表現も上手い見せ方です。
この感動は、いくら言葉を紡いでも伝えることはできないのかもしれません。
ぜひとも、劇場に足を運んで確認してみてください。
さて、次はそれぞれのツッコミどころをピックアップしていきたいと思います。
やはり、満場一致の意見として取り上げることができるのは「あれ、去年の映画の終わりでジガルデパーフェクト出てたけど、主役じゃなかったの?」という点です。
もっと言えば、プニちゃんはZ2がいなくても100%になれるのか?という点もよく分からない話です。
残念ながら、ジガルデは客寄せパンダ的な立ち位置だったようです。ぜひとも、次は主役で見たいものです。(たぶん、アニメでしょうが)
そしてやはり、サトシに『てっぺきくん』は必要なかったのでは?という話題を取り上げるべきでしょう。
サトシは、山を吹き飛ばすボルケニオンのアームから発射される『ハイドロポンプ』を至近距離から何度も食らっていますが、とくにケガはしていません。
更に、後半でメガライボルトの『エレキフィールド』で感電している状態で、メガハガネールの『ステルスロック』を撒かれるという状態を、ボルケニオンと一緒に耐えるという耐久性の高さです。
100歩譲って、ピカチュウの『10まんボルト』をいつも浴びているから『エレキフィールド』に耐性があると言われればそれまでです。
しかし、『ステルスロック』はゲーム内のような体に食い込む優しい仕様(?)ではなく、触れた瞬間に爆発を起こすという恐ろしい技なのです。
ボルケニオンは、マギアナを助けるために何度も移動しようとしますが、そのたびに『ステルスロック』が起動し、近くにいたサトシも爆風に巻き込まれています。(3回)
なので、たとえボルケニオンが『スチームバースト』で爆発しても、水蒸気の中から『ミュウツーの逆襲』でポケモンたちを引き連れてやってくる、あの平然とした顔で歩いてくるに違いありません。
その他も色々ありますが、それらはぜひ劇場で確認してみてください。
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